~初版の前口上~

回文といえば「ダンスが済んだ」「竹やぶ焼けた」あたりが有名である。一方回文作者の中には回文でまとまった物語を作る人もいる。それは、ときには何千文字もの長さになることがある。

私がそのような長い回文に触れて驚くのは、まず文が支離滅裂にならないでちゃんとまとまっている点、もう一つは読んでちゃんと意味が通る点である。私も暇に任せて長い回文を作ることがある。その際意味の通る言葉を探すのも大変だが、このような部品探しに夢中になると、今度は文全体のまとまりが無くなるような不安に駆られる。例えばいま付け足したばかりの10文字くらいの部分にとらわれて、文章全体のストーリーが混乱することは、しょっちゅうである。そういうわけで、ちゃんとした物語が作れる回文作者を、私は尊敬する。

本稿では、私が暇に任せて言葉をいじっていたら、たまたま「できちゃった」長い回文を紹介したい。とはいえ、単に回文だけ紹介しても、読者に意味が通るかどうかは自信が無い。そのかわり、適当に意味をこじつけることで一つの物語としての体裁を整えることとする。この作業によって、回文が支離滅裂であることが回避できていれば、幸いである。

最後に、回文の紹介の順番について説明する。まず、作った回文を「手を加えずに」紹介する。つぎに、これを漢字・記号交じりの文に改める。この次に、物語として紹介しやすくするため登場人物について説明する。以上の準備を踏まえ、部分ごとに回文の解説をする(この際わかりにくい語句の意味も説明する)。

なお、コミケット55にて発表した作品に誤植があったため、字句を修正しました (2003/10/13)
※2019.03/27追記 正しくは1999年冬のコミケット57